文章が「子どもっぽい」とか「学生気分が抜けてない」とか、よく言われるんです。

どうすれば社会人っぽい文章になりますか?

大人っぽい文章にしようと思って、敬語とか専門用語とかいっぱい入れたら「やりすぎだ!」と言われました。

大人の文章って、一体何?

「自分の文章は社会人として正しいのか?」

自信が持てないという若手社員のみなさんも多いですよね。

今回は「これさえ守れば社会人の文章になる」という鉄則をお伝えします。

大人の文章は「客観的文体」

社会人の文章と学生(子ども)の文章を分けるポイントは、敬語や難しい用語ではありません。

大事なのは「その文章が客観的文体で書かれているかどうか」です。

こちらの文章を見てみましょう。レストランのミーティングで学生バイトが提出したレポートです。

“私は秋のステーキフェアに合わせるデザートには柚子シャーベットが一番いいと思う。ステーキを食べたあとは口の中が脂っこくなるが、シャーベットのシャリシャリ感でさっぱりする。柚子のいい香りと酸味も最高だ。私の周囲でも、ステーキと柚子シャーベットの組み合わせが好きな人は多い。”

この文章、内容的には問題ありません。

  1. ステーキが脂っこい料理だという前提を踏まえ、
  2. 柚子シャーベットの特徴(アイスクリームやチョコレートムースとの違い)を述べた上で、
  3. 採用したら売れるはずという根拠を示しています。

このように大事な要素はすべて押さえている文章なのに、何となく「学生っぽい」印象ですよね。

それは「主観的な表現を多用していること」が原因です。

ポイント1「私は・・・思う」は使わない

私は秋のステーキフェアに合わせるデザートには柚子シャーベットが一番いいと思う。

「私は」ではなく物事を主語にしよう

学生っぽい印象を与えてしまう原因の一つが「私は」で書き始めてしまうことです。

「私は」で始まった時点で、「いまから始まるこの文章は、私の目から見た個人的主観の話でーす!」と宣言したことになるのです。

ちなみに小学生の作文は「ぼくは/わたしは」で始まりますよね。これは小学校の教育目標が「自分の経験や気持ちを言語化すること」にあるからです。主観を書くことが正解だったのです。

社会人らしい文章を書きたいなら、「私は」ではなく「物事」を主語にしましょう。

「と思う」ではなく「である」

文末の「と思う。」も学生っぽい印象を与える原因です。

「思っている」のは「私」ですから。これも主観表現です。

たとえ「私は」ではなく物事を主語にしていても、文末に「思う」と書いた時点でその文章の主語は「省略されている私」になってしまいます。

文末は「である(いる、する、なる)」で統一しましょう。

《改善例》
秋のステーキフェアに合わせるデザートには柚子シャーベットが最適である

同じ内容ですが、「私は…思う」をなくすだけで社会人っぽい印象になりました。

予想を語るときも「だろう」はNG

しかし、何でもかんでも「である」で断定しきれないこともあります。

たとえば「このサービスを実施したら、社会にこんな影響があるんじゃないかなあと思います…」という未来の予想を語るとき。

タイムマシンで見てきたわけでもないので、「こうなるのである」と断定はできないですよね。

こんなとき「と思う」や「だろう」を使いたくなりますが、これらも主観表現です。

正しくは「(物事)は・・・と考えられる/予想される」。

実際には、考えているのは「私」ですが、「考えられる」と受け身形を使うことで、文法上の主語は物事のままです。

ポイント2 フィーリングではなく事実を

“ステーキを食べたあとは口の中が脂っこくなるが、シャーベットのシャリシャリ感でさっぱりする。柚子のいい香りと酸味も最高だ。”

「さっぱりする」というのは自分の感じ方、フィーリングです。

「柚子のいい香り」も個人的な好みです。世の中には柚子の香りが嫌いな人もいるかもしれません。

「タバコの煙」とか「エンジンオイルの匂い」など、「いい香り」の定義は人それぞれ。柚子を「いい香り」と決めつけても、「それはあなたが好きなだけでしょ?」「個人的な好みを仕事に持ち込むな」と言われてしまうのが社会人です。

《改善例》
アイスクリームと異なり氷粒が大きいため口の中の脂分が落とされ、柑橘系の香りと酸味が清涼感を与える

「柑橘系の香り」であることは、嫌いな人でも否定できません。

「さっぱりする」を「清涼感」と言い換えましたが、それを「与える」の文法上の主語は「香りと酸味が」です。主観表現を回避しています。

ポイント3 エビデンスは大きな母集団で

私の周囲でも、ステーキと柚子シャーベットの組み合わせが好きな人は多い。”

「数人の身内」だけでは「それは君のクラスで流行ってるだけでしょ?」と言われてしまいます。

エビデンス(証拠)を挙げるなら、統計的に意味のある規模のデータがいいですね。

《改善例》
過去の売上データでも、ステーキのあと単品で柚子シャーベットを注文した人はバニラアイスの1.5倍である。

店の売上データを参照すると「1.5倍」と数字で語ることもでき、説得力が増しますね。

まとめ

以上をまとめると、次のようになります。

《改善例》
秋のステーキフェアに合わせるデザートには柚子シャーベットが最適である。
アイスクリームと異なり氷粒が大きいため口の中の脂分が落とされ、柑橘系の香りと酸味が清涼感を与える。
過去の売上データでも、ステーキのあと単品で柚子シャーベットを注文した人はバニラアイスの1.5倍である。

学生バイトの文章が、グッと社会人らしい印象に変わりました。

内容や用語を難しくするよりも、主観表現を片っ端から客観表現に置き換えるのが「大人の文章」を書くコツです。