なぜ「分解」がうまくできないのか?
「この問題を分解しましょう」と言われたとき、うまく要素を出せずフリーズしてしまった経験はありませんか?
あるいは、出したつもりでも「なんだか偏っている」「言い漏れがある」「分類がかぶってる」といったモヤモヤを感じることも。
その理由はシンプルです。分解にルールがないと、主観や思いつきに頼ってしまうからです。
そこで使えるのが、MECE(ミーシー)とロジックツリーという2つの道具です。
MECEとは? ― まずは定義から
MECEとは「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略で、
漏れなく、ダブりなく
という状態を表します。
- Mutually Exclusive(相互に排他的):分類がかぶっていないこと
- Collectively Exhaustive(全体として網羅している):言い漏れがないこと
たとえば「旅行の目的」を分解する場合、
- × 趣味・リフレッシュ・観光 ←重複や基準のブレがある
- ○ レジャー・ビジネス・冠婚葬祭 ←目的の切り口でMECE
MECEで分解できると、論点のモレや混同が減り、思考がスッキリします。
ロジックツリーとは? ― 分解の「見える化」
MECEを目に見える形で使う道具が、ロジックツリーです。
ひとつのテーマを枝分かれさせながら、要素を分解していく思考法で、見た目は「木の枝」のようになります。
たとえば「売上が伸びない」というテーマをロジックツリーで展開すると:
コピーする編集する売上が伸びない
├─ 顧客数が足りない
│ ├─ 認知度が低い
│ └─ ターゲットが絞れていない
└─ 客単価が低い
├─ 安い商品が中心
└─ クロスセルができていない
このように、「構造で考える」ことが可視化され、複雑な問題も整理しやすくなります。
MECEとロジックツリーの組み合わせが最強
単独で使っても効果はありますが、MECEとロジックツリーはセットで使うと威力倍増です。
ツール | 主な役割 | 説明 |
---|---|---|
MECE | 正しい分け方のルール | 重複せず、網羅できているかをチェックする基準 |
ロジックツリー | 分けた内容の見える化 | 上から下に構造化し、全体像と詳細を一望できる |
ツリーを書いたあと、各枝がMECEになっているか?を点検する。
これが、ビジネス思考における「分解の基本動作」です。
よくある失敗例:構造がグラグラしてしまう原因
① 並列にすべきところが因果になっている
✕「顧客数が減った → 売上が落ちた → モチベーションが下がった」
→これはツリーではなく時系列・因果関係。分解ではない。
② 分類の軸がバラバラ
✕「売上減の要因:クレーム・広告不足・来店数」
→「クレーム」は品質の話、「広告」はプロモ、「来店数」は顧客行動。軸がズレている。
③ ダブりや漏れがある
✕「原因は:人員不足・担当者不在・教育不足」
→「人員不足」と「担当者不在」はほぼ同じ。MECEではない。
どうやって「正しい軸」を決めるのか?
分解のコツは、分類の「軸」を明確に決めることです。
軸にはさまざまな種類があります:
- 時間軸(過去・現在・未来)
- 機能軸(営業・開発・バックオフィス)
- 顧客の視点(ニーズ・導入障壁・満足度)
- 原因の種類(人・物・金・情報)
どの軸を使うかは、問いの目的によって変える必要があります。
「どんな行動を起こしたいか?」が決まっていれば、自ずと必要な分解軸も見えてきます。
おわりに:分解は“頭の中の整理棚”をつくる作業
MECEとロジックツリーは、単なるフレームワークではありません。
使いこなすことで、自分の思考を見える形に整理し、人に伝えやすくするツールになります。
構造を持たない情報は、記憶に残りません。
逆に、構造化された思考は、納得感と信頼感を生み出します。
まずは小さなテーマから。
自分の考えを“棚に分類していく”感覚で、分解の力を磨いていきましょう。

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