表面的な対処で終わっていませんか?

「今後は気をつけます」
「次は丁寧にやります」

このような言葉で問題を締めくくってしまった経験、誰にでもあるのではないでしょうか。

でも、それで本当に同じミスは防げるのでしょうか?
ロジカルシンキングの出発点は、現象の奥にある“構造”を見抜くことです。
そのカギとなるのが、「なぜ?」という問いです。


「なぜ?」は“深掘り”のための問い

たとえば、「納期が遅れた」という現象に対して「なぜ?」を問いかけてみます。

  • なぜ納期が遅れた? → 図面の確認が遅れた
  • なぜ図面の確認が遅れた? → 担当者が着手を忘れていた
  • なぜ忘れた? → 忙しくて他の業務を優先していた
  • なぜ優先した? → 緊急対応の割り込みが多かった
  • なぜ割り込みが多い? → 計画と実際のズレを把握できていない

ここまで掘ると、見えてくるのは「個人のうっかり」ではなく、「計画と現場の運用が一致していない仕組み」です。これこそが「本当の問題」=真因です。


でも…その「なぜ?」、本当に役に立っていますか?

ここで注意したいのは、すべての「なぜ?」が解決につながるわけではないということ。

たとえば、次のような「なぜ?」の連鎖に心当たりはありませんか?

  • なぜ失敗した? → 注意が足りなかった
  • なぜ注意が足りなかった? → 気が緩んでいた
  • なぜ気が緩んでいた? → 慣れが出ていた
  • なぜ慣れが出た? → 意識が低かった

……このような「なぜ5回」では、結局“本人の心構え”が原因とされ、再発防止が「気をつけよう」や「心を入れ替えよう」で終わってしまいます。

これは“人に原因を求める思考”であり、構造の改善につながらない“自己責任ループ”です。


「なぜ?」ではなく「何が妨げているか?」

有効な問いとは、「なぜこうなったのか?」ではなく、「今、何がそれを妨げているのか?」という視点です。

この違いは次の通りです:

問いの種類結びつく対象解決に役立つか?
なぜできなかったのか?心の持ちよう・過去✕ (変えられない)
何が妨げているのか?現在の構造・仕組み◎(変えられる)

たとえば:

  • 「なぜ報告が遅れた?」 →「油断していた」✕
  • 「何が報告を遅らせている?」→「報告ルートが複雑」「タイミングが不明確」◎

このように、「構造・環境・仕組み」に目を向ける問いこそが、解決可能な原因を見つけ出すカギとなるのです。


原因分析のゴールは、「変えられるもの」にたどり着くこと

ロジカルシンキングにおいて重要なのは、原因を深掘りすること以上に、「深掘った先に何が見えるか」です。

  • 「人の気の緩み」は変えにくい
  • 「仕組みや環境」は変えられる

原因分析は、「誰が悪いか」ではなく「どこを変えれば結果が変わるか」を見つけるためにあります。


おわりに:「責めるな、構造を見よ」

「なぜ?」は、過去を裁くための問いではなく、未来を変えるための問いです。

だからこそ、「なぜ5回」よりも、「構造3層」(現象→プロセス→仕組み)で見る習慣や、
「今、何が妨げている?」という問いの言い換えが、ロジカルシンキングの質を大きく左右します。

責任の所在を問うよりも、構造のズレを問え。
それが、実務に効くロジカルシンキングです。

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