似ているようで、決定的に違う言葉

職場でよく耳にする「課題」と「問題」。
実はこの2つを明確に区別できていない人が意外に多いものです。

「今の課題は納期ですね」
「その問題はすでに対応済みです」

…ところが、聞いてみると、課題と言いつつ“困りごと”を指していたり、問題と言いつつ“目標”の話をしていたり。**言葉がズレると、考えもズレる。**これは、論理的思考において重大な障害です。


「問題」とは、“今、困っていること”

私たちが定義する「問題」とは、現時点でマイナスになっていること、つまり「何とかしないと困ること」です。

たとえば:

  • 顧客からクレームが出ている
  • 作業が計画より遅れている
  • チーム内で認識がズレている

これらはすべて、「今、正常でない」「望ましくない状態」であり、対処を必要とします。これが「問題(Problem)」です。


「課題」とは、“これから乗り越えるべきこと”

一方で、「課題」は未来志向の言葉です。
今すぐ困っているわけではないけれど、**達成や改善のために必要な“ハードル”や“目標”**を指します。

たとえば:

  • 顧客満足度をさらに上げること
  • チームの自走力を高めること
  • 新人が早期に戦力化できる仕組みをつくること

これらは放っておいても会社が潰れるわけではありませんが、「より良くなるために、これからやるべきこと」です。


一目でわかる「問題」と「課題」の違い

項目問題(Problem)課題(Challenge)
時制現在未来
状態困っている、支障がある理想に近づくための目標
優先度高い(緊急性がある)状況による(重要だが緊急でない)
感情の色ネガティブ(不安・焦り)ポジティブ(向上・挑戦)

なぜこの区別が重要なのか?

問題と課題を区別できないと、対処の方向性があいまいになります。

たとえば、上司に「今の課題は何か?」と聞かれて、
「納品が遅れてます」と答えたら…?
それは課題ではなく、すでに発生している問題です。対処すべきなのに、あたかも“成長のためのテーマ”のように語ってしまうと、対応が後手になります。

逆に、「今の問題は何か?」と聞かれて
「生産性を高めることですね」と答えるのも違和感があります。それは**未来志向の“チャレンジ”**です。


問題→課題→目標の順に考える

実務ではこの順番が鉄則です:

  1. 今、どこに問題があるか?(事実ベースで現状把握)
  2. そこから何を目指すべきか?(理想と現実のギャップ)
  3. そのギャップを埋めるために、何に取り組むか?(課題設定)

このように、課題は“問題の分析”のあとに初めて見えてくるものです。


おわりに:問題を見つける力が、課題設定の出発点

多くの職場で見られるのは、「課題は○○だ」といきなりスローガン的に言ってしまうパターンです。しかし、問題を見ずして課題を語ると、空回りします。

ロジカルシンキングの第一歩は、「今、何が起きているか」を冷静に見極めること。そしてそのうえで、乗り越えるべき課題を設定し、現実的な解決に向かうことです。

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