「理由はあるけど、納得できない」…その正体は?
こんな会話、見覚えがありませんか?
A「この案の理由はコスト削減です」
B「でもそれって本当に意味あるんですか?」
A「いや、なんとなく…必要だと思って」
一見、理由を説明しているようでも、相手が納得していない。
これは、「理由」と「根拠」の混同によって起こる典型例です。
論理的に説明するとは、「ただ思ったことを言うこと」ではありません。
他人が納得できる土台=根拠を提示することです。
「理由」と「根拠」の違いとは?
この2つ、日常では混ぜて使われることが多いですが、論理の上では明確に区別できます。
項目 | 理由 | 根拠 |
---|---|---|
定義 | 自分がそう考えた背景 | 他人にも納得できる材料 |
主観/客観 | 主観寄り | 客観寄り |
種類 | 思いつき、価値観、経験など | データ、事実、第三者の意見など |
効果 | 自分は納得している | 相手も納得しやすい |
つまり、「理由」は思考の動機であり、「根拠」は説明の証拠なのです。
例で比較してみよう
A. 理由だけで説明した場合
提案:「この研修は対面でやるべきです」
理由:「オンラインだと伝わりにくい気がするから」
→ これは主観的な理由。気持ちはわかるが、説得力は弱い。
B. 根拠を添えた説明
提案:「この研修は対面でやるべきです」
理由:「双方向の議論が必要だからです」
根拠:「昨年の同様研修では、対面のほうが発言率が約1.5倍高かったという結果があります」
→ データという根拠が加わることで、納得度が一気に上がります。
なぜこの違いが重要なのか?
ビジネスでは、「納得してもらう」ことが常に求められます。
企画書、報告書、会議発言、どれも相手を動かすためには「根拠」が必要です。
- 理由だけ → 「あなたの意見でしょ?」で終わる
- 根拠あり → 「それならやってみよう」と動く
論理的コミュニケーションとは、自分の中の動機(理由)に、相手のための証拠(根拠)を添えることなのです。
よくある混同パターン
パターン1:「私はそう思う」が多すぎる
→ 個人の感想ばかりで、説得力が生まれない
パターン2:根拠が感情や印象
→ 「そう感じた」「怖い気がした」は理由であり根拠ではない
パターン3:根拠のない結論だけ伝える
→ 「〇〇すべきだ」と断言するが、その裏付けがない
「根拠」がないとどうなるか? ―空中戦になります
会議や上司への説明で、理由だけで話を進めると、相手はこう感じます:
「その考えに、どんな裏付けがあるの?」
「あなたがそう思う理由はわかる。でも、それは他人にも通じるの?」
これは“主観の壁”にぶつかっている状態です。
根拠があるだけで、相手の理解と納得度は格段に変わります。
おわりに:理由+根拠=説得力
論理的に伝えるとは、「理由を言えばいい」ではありません。
「理由を構成し、その背後にある根拠を提示すること」です。
この区別ができるようになると、あなたの発言はぐっと伝わりやすくなります。
ぜひ、問い直してみてください。
「これは、自分の理由か? 相手が納得できる根拠か?」

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