書いた本人は「ちゃんと書いたつもり」

「いや、ちゃんと理由も書いたし、具体例も入れました」

そう反論したくなる気持ちはよくわかります。
しかし、読み手がこう感じていたらどうでしょう?

「で、結局あなたは何が言いたいの?」
「つまり、どうしてほしいの?」

これは、「主張」と「説明」の違いが整理できていないときによく起こる現象です。


主張と説明はまったく別物

簡単に定義するとこうなります:

種類主張説明
意味自分の立場・意見・判断それを支える理由や背景
位置付け「私はこう考える」「なぜならこうだから」
役割話の“ゴール”になる部分ゴールへ導く“道筋”になる部分
「この案に賛成です」「コストと効果のバランスが良いから」

主張がない文章は、「どこに連れていかれるのか」が見えない話と同じです。
逆に説明だけが続くと、「だから何?」と思われてしまうのです。


「説明しか書かれていない文」の典型例

たとえば、ある施策に対してこんな文章があったとします。

「今回の施策は、事前準備に時間がかかり、関係各所との調整も必要になります。特に◯◯部署との連携が成否のカギとなります。」

これは丁寧な「説明」ですが、主張がありません。
つまり、読み手はこう思うのです:

「で、やるべきなの?やめるべきなの?」
「あなたは賛成なの?反対なの?」

こうした文章は、判断や立場が見えず、相手が動けない文章になります。


なぜ人は主張を避けるのか?

  • 批判されたくない
  • 意見を言い切るのが怖い
  • 「上から目線」に聞こえないか不安

…気持ちはわかりますが、主張を避けると責任の所在も曖昧になります。

「ロジカルに書く」とは、立場を明確にしたうえで、その理由と根拠を整理することです。


ロジカルな文章に必要なのは「構造」ではなく「軸」

PREPや三段構成など、便利な構造はあります。
でもそれ以前に、「この文章の軸となる主張は何か?」を定めることが先です。

文章の構造はこうあるべきです:

① 主張(何を言いたいのか)
② 理由(なぜそう言えるのか)
③ 根拠・データ・事例(それを支える証拠)
④ 再確認・まとめ

この中で最初の「①」が抜け落ちている文章は、読みやすくても何も伝わらないのです。


おわりに:「書く前に、自分の立場を決めているか?」

ロジカルライティングは、「伝える」ではなく「伝わるように構成する」技術です。

そのために必要なのは、技術の前に「姿勢」です。

  • 私は何を主張するのか?
  • なぜそれが必要なのか?
  • それをどうやって伝えるか?

この順番を守るだけで、文章はぐっと読みやすく、説得力のあるものになります。

まずはひとつ、**「私はこう考える」**を明確に書くところから始めてみましょう。

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